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高松地方裁判所 平成10年(ワ)293号 判決

原告 朝日スチール工業株式会社

右代表者代表取締役 中山秀之

右訴訟代理人弁護士 野上邦五郎

同 杉本進介

同 冨永博之

被告 積水樹脂株式会社

右代表者代表取締役 増田保男

右訴訟代理人弁護士 那須弘平

同 酒井正之

同 伊従寛

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、別紙物件目録二記載のメッシュフェンスを製造してはならない。

二  被告は、原告に対し、金三八五万円及びこれに対する平成一〇年六月二七日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

第二事案の概要等

一  事案の概要

本件は、原告が、被告に対し、被告が製造販売する別紙物件目録二記載の胴縁一体型メッシュフェンス(以下「被告製品」という。)は、原告が製造販売する原告の商品であることを表示するものとして需要者に周知されている別紙物件目録一記載の胴縁一体型メッシュフェンス(以下「原告製品」という。)と形態が著しく類似し、原告製品と誤認混同するおそれが生じているから、不正競争防止法二条一項一号に該当する不正競争行為であるとして、被告の右製造行為の差し止め及び損害賠償を求めた事案である。

二  前提となる事実(証拠の記載がないものは当事者間に争いがない。)

1  当事者

(一) 原告は、主にネットフェンス、鉄鋼製品、金網加工品の製造、販売を業とする会社である。

(二) 被告は、フェンスを含め、主に道路、建築資材の製造、販売を業とする会社である。

2  製造販売の経緯

(一) 原告は、昭和五五年から「朝日UN(ユニ)フェンス」と称して原告製品の製造販売を全国的に開始し、現在に至っている。

(二) 原告は、昭和五七年一一月一九日、原告製品に係る意匠権を取得したが、平成九年一一月一九日の期間満了により、意匠権は終了した(甲一四八の1)。

(三) 被告は、遅くとも平成一〇年一月一〇日から「メッシュフェンスG0(ジーゼロ)」と称して被告製品(ただし、別紙物件目録二に掲げた物件の構成以外の他の構成及び特徴の有無については後記のとおり当事者間に争いがある。また、別紙物件目録二記載の構成cの「根元の一部を切り欠いた」とは、「根元に約七ミリメートルの空隙を設けている」ことであると認められる(弁論の全趣旨)。)の製造販売を全国的に開始し、現在までに少なくとも七〇〇〇メートルを製造販売し、三八五〇万円を売り上げ、三八五万円の利益を得た。

3  製造販売経路

原告製品及び被告製品は、官公庁用及び民間個人用においても、そのほとんど全てが、ユーザーである施主から元請会社に発注され、以下順次、下請会社、フェンス販売施工業者に発注され、さらに、右業者から原告及び被告に発注される。そして、発注された製品は逆の経路をたどって施主に納入される。

仔細にみれば、フェンス販売施工業者と被告との間に商社代理店や特約店が介在する(乙四三の1)。(以下「元請会社、下請会社及びフェンス販売施工業者等の取引業者」を単に「取引業者」という。)

三  争点

1  原告製品の形態が商品の出所表示として取引業者又は施主の間に広く認識されているか否か。

2  被告製品が原告製品と類似し、原告製品の出所について、取引業者又は施主に誤認混同を生じさせ、あるいは生じさせるおそれがあるか否か。

3  損害額

四  争点に対する当事者の主張

1  争点1(原告製品の形態が商品の出所表示として取引業者又は施主の間に広く認識されているか否か。)について

(原告の主張)

(一) 原告製品の形態の商品の出所表示としての特徴

(1)  原告製品の商品表示としての特徴は、<1>胴縁一体型メッシュフェンスであること、<2>別紙物件目録一記載のB、<3>別紙物件目録一記載のCである。これらは従来のフェンスになかった特徴であり、すなわち、胴縁部がメッシュパネルの延長部とそれに直交する横線部とにより、メッシュパネルと一体の円筒状として形成され、メッシュパネル部は縦長の縦横のメッシュパネルで形成されたシンプルで独特な形態ということができる。

(2)  原告製品は、昭和五五年に、胴縁とメッシュパネルを同一部材で作成するというそれまで全くなかったタイプのフェンスとして発売されたものであり、発売当初からそれまでの菱形ネットフェンスとは全く異なる独特の形状のものとして業界に知られ、他社も追随して同系統のフェンスを発売するようになった。これらの製品が胴縁一体型メッシュフェンスと呼ばれるようになったものであり、原告製品は胴縁一体型メッシュフェンスの草分け的存在である。他社は、胴縁一体型メッシュフェンスの形態の主要部分である「胴縁」、「メッシュパネル」について他社製品とは明確に違いのある製品を製造販売しており、このような状態がフェンス業界において長期間続いているのであるから、原告製品の形態が製品の自他識別機能を十分に有している。

(3)  施主は実際に設置されているフェンスを見て、デザイン、形態等を気に入って購入するのが一般であるところ、フェンスは公共事業用及び民間のいずれの場合も、人目につきやすい場所に設置されるから、もともと施主の目に付きやすいうえ、原告製品は発売以来これまで業界のトップシェアを維持しており、人目に付きやすい所に最も多く設置された胴縁一体型メッシュフェンスといえるから、施主が設置された原告製品の形態をみた場合、フェンスとして多く用いられている原告製品であると認識するのであり、原告製品の形態は原告製品自体を表し、世間で多く用いられている優良なフェンスであることを示している。

また、取引業者も、業界に対する広告等がなされた結果、原告製品の形態から原告製品であることを認識するのである。

(4)  商品の形態が商品表示となるためにはその商品を製造している具体的な会社名や商品名まで理解している必要はなく、特定の会社の製造販売にかかるという認識があればよい。施主は様々な施設に設置された原告製品を見ており、具体的メーカーは分からなくても特定の会社であることは認識している。

(5)  被告は、実質的機能を達成するための構成に由来する商品形態は商品表示に該当しないと主張するが、技術的に必然的な形態であるならば、他に異なる胴縁一体型メッシュフェンスは存在しないはずであるところ、他のフェンスメーカーはそれぞれ工夫をして原告製品と形態の異なる胴縁一体型メッシュフェンスを製造している。

また、被告はシンプルな形状を含む場合には特徴となりえないかのような主張をするが、従来の製品にシンプルな形状を含んだものがなければ、シンプルな形状を含む部分が製品の特徴になるのであり、製品を全体的に認識すべきである。

(6)  以上からすると、原告製品の形態は「朝日UN(ユニ)フェンス」としての商品の出所表示性を有しているというべきである。

(二) 商品の出所表示としての周知性

(1)  周知性

ア 原告製品は昭和五五年に菱形ネットフェンスにとって変わる画期的フェンスとして発売され、その高いデザイン性や耐久性から、官公庁のみならず民間における需要も増大し、常にトップシェアを誇ってきた。現在においても、原告製品は四国において九五パーセント以上のシェア、西日本では七五パーセント以上のシェア、中部関東でも高いシェアをそれぞれ占めており、原告はメッシュフェンス全体でも三八パーセント以上のシェアを占めている。その結果、公共施設に設置された多くの原告製品が施主の目に触れるようになり、また、原告が大量の原告製品のカタログを発行し、継続的に新聞、雑誌、専門誌等における宣伝広告等を行った結果、遅くとも昭和六〇年ころまでには、原告製品は、デザイン、形態、機能性についての特異性と相俟って、取引業者及び施主の間で原告製品であることを示す表示として認識されるようになり、被告が被告製品の販売を開始した時点においては、原告製品は既に周知性を有していた。

イ 原告製品は画期的フェンスであったことから莫大な宣伝費をかける必要がなかったのであり、原告製品が至るところに設置されていること自体が抜群の宣伝である。

ウ 原告製品の商品名である「朝日UN(ユニ)フェンス」には様々なバリエーションがあるが、いずれも原告製品と同じ構成を有しているから、「朝日UN(ユニ)フェンス」全体のシェアからみて原告製品の周知性を捉えることができる。

(被告の主張)

(一) 原告製品の形態の商品の出所表示としての特徴

(1)  原告の主張する原告製品の形態の特徴は長方形や円(筒形)などの単純で自然なものであり、他社製品と隔絶した顕著な印象を与える形態でもなく、自他識別能力を有するとはいえない。原告製品と同様に上下端の胴縁が円筒状である胴縁一体型メッシュフェンスは、原告製品以外にも七社が製造販売しており、ありふれた形であって、各社とも商品の形態それ自体には際立った差異や特徴がない。

(2)  多くの会社が種々様々な胴縁一体型メッシュフェンスの製品を販売しており、その形態自体からは出所が不明であるから、商品の形態自体がユニークであるとはいえない。

原告の主張する原告製品のデザインの特徴は、従来のネットフェンスに対する胴縁一体型メッシュフェンスであることの特徴であり、本件はメッシュフェンスの中での選択であって、メーカー、価格等がその選択の基準となる。

(3)  フェンスのように消耗品でない商品の場合、その機能や出所に着目して購入が検討されるのが通常であり、その意味で商品の形態自体の出所識別能力は低い。

(4)  胴縁一体型メッシュフェンスの成熟した市場の状況からすれば、ユーザーは特定の出所さえも認識しえないというのが実情である。

原告は、取引業者及び施主が製品を見て特定の会社が製造していると認識できれば出所の具体性があると主張するが、どのような製品でも最終的には特定の会社が製造したものであることは明らかであり、製品の形態から、製造元である出所、特定のメーカー、商品名が直接あるいは間接的に認識可能なものでなければならない。

(5)  実質的機能を達成するための構成に由来する商品形態は商品の出所表示に該当しない。原告製品及び被告製品のような透視通風型のメッシュフェンスでは、メッシュパネルが胴縁部に縦横に直線状に張り巡らされ、網目は長方形となり、その胴縁の断面は丸、四角、三角の形状をなすのが基本であり、必然的に技術的機能に由来するある種の類似性を持つのであって、このような製品に不正競争防止法の保護を与えると、技術的機能に由来するメッシュフェンス製品の形態の採用を排除することになる。

(6)  原告が従来なかったと主張する原告製品の特徴は昭和四一年に英国特許の公告がなされており、昭和四〇年代には世界中で知られていたことである。

(二) 商品の出所表示としての周知性

(1)  周知性

ア 原告製品は昭和五五年ころに遮蔽型フェンスに対する透視通風型フェンスとして注目された時期があったが、多くのメーカーから多様な形態の製品が発売され、原告及び被告を含めて一ないし五位の競争者が同一ないし類似した形態を有する競合品を出している最近の市場占拠状況下においては、原告製品の周知度は競合他社と変わらず、原告製品の形態自体が周知されているとはいえない。原告が主張する原告製品の宣伝効果は菱形ネットフェンスに対する昭和五五年当時のものであり、現在にそのまま当てはまるものではない。

イ 原告が宣伝広告の事実を立証するために挙げる多くの書証には原告製品以外のフェンスの写真が掲載されていたり、別紙一記載の構成にない構成を含む「朝日UN(ユニ)フェンス」の写真が掲載されたりしており、原告製品が取引業者又は施主の目に触れる機会は書証の数量に比例していない。また、いずれの宣伝広告も業界向けの雑誌等ばかりであり、周知であるとしても、それは業者間のことを意味するにすぎない。

原告の指摘する原告製品のシェアは原告製品と異なる構成を有する製品等も含まれており、原告製品だけのシェアではない。

原告が主張する程度の宣伝であれば、被告や他のメーカーも同様に行っている。

原告は、原告製品が設置されていること自体が大きな宣伝広告であると主張するが、そこでいう宣伝効果は従来の菱形ネットフェンスに対する昭和五五年当時のことにすぎない。

(2)  流通過程

メッシュフェンスは、個人消費者が消費者向け小売市場において直接商品を見て選択購入するものではなく、官公庁、ゼネコン、商社、工事店、金物屋等が選定し、施工業者が介在して施工させる建築資材であるから、周知性の要件は全て業者、官公庁レベルで検討すべきである。

個人消費者は製品の出所に直接関心を持たないし、官公庁等の大規模ユーザー、施工業者は商品の形態等も考慮するが、最終的には社名・商標・品番等で製品を区別し選択する。取引業者及び施主の全てがフェンスの形態から原告の出所を特定できる状況にないことを原告側申請の証人も自認している。

2  争点2(被告製品が原告製品と類似し、原告製品の出所について、取引業者又は施主に誤認混同を生じさせ、あるいは生じさせるおそれがあるか否か。)について

(原告の主張)

(一) 商品の類似性及び混同のおそれについて

(1)  被告製品の別紙物件目録二記載のa、b、c、d、eの構成は原告製品の別紙物件目録一記載のA、B、C、D、Eのそれとほぼ同一であって非常に酷似しており、その形態や被告が原告製品の意匠権の期間満了と同時に被告製品を販売し始めていることから、被告が原告製品を模倣したことは明らかである。

原告製品と他社製品とは一見すれば違いを見つけることができるが、被告製品ではそれが困難である。メッシュフェンスのユーザー(施主)の七割が民間会社であり、各社の胴縁一体型メッシュフェンスも性能においてさほどの差がなく形態の違いが最も重要であるとみなされやすいことにかんがみると、一見して外観上の差のない被告製品は原告製品と誤認混同されるおそれが大きい。

(2)  被告の主張する胴縁の円筒状の切欠部の大小、パネルの連結金具の形状の違いは極めて微細なものである。フェンスのように全体が大きなものについては微細な部分は目に付きにくいというほかない。また、原告製品には「◇A」の標章が付されているが、ネジの頭に刻印されているだけであり、被告製品にも「SJC」の商標が付されているが、シールとして貼られているにすぎないうえ、被告のカタログにもほとんど写っていないのであるから、需要者から第一次的に着目されるデザイン、形態に比して、右マークによる両者の識別可能性は非常に低い。

不正競争防止法にいう誤認混同は商品を二つ並べて行う比較ではなく、離隔的観察におけるものをいうのであるから、商品同士に微細な違いがあっても誤認混同する。

被告の主張する「メッシュパネル部を固定金具の上に落とし込むことができる。」、「塗料からダイオキシンがほとんど出ない。」といった被告製品の特徴はその形態に関するものではないから、右特徴があるとしても、原告製品を見た者が被告製品のカタログ(パンフレット)を見た場合、原告製品と誤認するおそれがある。

(3)  フェンス販売施工業者など専門業者がフェンスの注文と納品の間に介在したとしても、どのフェンスにするのかは、業者ではなく施主が決める。その際、施主は全国に設置された原告製品を見ているから、設置されている原告製品を気に入り、その後に被告製品のパンフレットを見て、原告製品と思って被告製品を選定する可能性がある。施主の決定段階で誤認混同すれば、それ以降に社名、商標名の確認がいくらなされても、施主の誤認混同が解消されることはなく、フェンス販売施工業者によって正されることはない。

(4)  被告は、これまで三角形の胴縁一体型メッシュフェンスの意匠権を取得して製造販売を行ってきたが、今回原告製品と同一ともいえる上下端の胴縁が円筒形の一体型の被告製品を製造販売し始めたものであり、誤認混同させる意図があるとしか考えられない。

(被告の主張)

(一) 商品の類似性について

(1)  被告製品には別紙物件目録二記載の構成に加えて、以下のような特色があり、原告製品と類似していない。被告製品の形態は、機能性、外観性、低廉性等を追求した結果であり、原告の意匠権が消滅したから模倣したというわけではない。

ア 製品本体の特色として次の点がある。

<1> メッシュパネルを固定する中間金具(以下「ばたつき防止金具」という。)について、原告製品のそれはワイヤー線状で構成されているのに対し、被告製品のばたつき防止金具はベルト状の鋼板でできており、両面から金具を合わせてワンタッチで仮留めできるようになっているのであって、右方式は実用新案として登録されている。また、右ばたつき防止金具は意匠としても登録されている。

<2> 原告製品は支柱の固定金具に上下の胴縁部分を横から挿入してメッシュパネルを施工する構造になっているのに対し、被告製品は、胴縁部分の円筒形の円の末端にメッシュパネルから七ミリ以上の空隙部分が設けられており、支柱の固定金具に胴縁を上から落とし込むことが可能な構造となっているから、設置した支柱のどの場所からも一人で施工することができるというメリットがあるのであって、被告は右構造の特許を出願中である。また、右のとおり、胴縁に空隙が存在することから、胴縁にゴミ等がたまりにくいという機能も有する。

<3> 原告製品の支柱の上端のキャップは平たい円弧状であり、四か所に窪みがあるのに対し、被告製品の支柱の上端のキャップは横から見た時大きく盛り上がった円弧であり、窪みがない。また、原告製品の支柱の中央部分には、ばたつき防止金具の回転を防止するための窪みがあるが、被告製品の支柱には窪みはない。

<4> 原告製品には◇Aの標章が付されているのに対し、被告製品の全ての支柱の下部には、被告の登録商標を記載した「SJC」のシールが貼ってある。

<5> 原告製品のメッシュパネル部は全て均等の縦長であるが、被告製品は上端下端のメッシュパネルの格子の縦の長さがやや短い形態となっているものがある。

イ 梱包状態についてみるに、原告製品と被告製品とでは、出荷される際に梱包された外観が大きく異なるうえ、被告製品の梱包には社名、商品名及び登録商標等が付されるなどしており、一見してその差は顕著である。

ウ 原告製品のメッシュパネルの塗装はダイオキシン発生量の高い塩化ビニール性であるが、被告製品のそれはダイオキシン発生の少ない非塩化ビニール系樹脂の一種を使用している。

(2)  原告が胴縁一体型メッシュフェンスの構成の主要部分と主張する「胴縁」及び「メッシュパネル」の形態に絞ってみても、例えば、沼田金属工業株式会社(以下「沼田金属工業」という。)の「ニューカールフェンス」(昭和六二年に意匠権が登録されている。)や東洋エクステリアの「ハイグリッドA」という原告製品とほとんど同一形態の製品が原告の意匠権存続中のころから販売されており、原告が主張する構成の胴縁一体型メッシュフェンスは原告製品のみではない。

原告は、不正競争防止法二条一項一号の誤認混同につき離隔的判断を基準とする旨主張するが、被告製品以外の他社の製品であっても離隔的にみた場合類似しているといえなくはないのに、物理的な形態の類似のみをもって誤認混同のおそれがあるとするのは失当である。結局、原告の主張は形態が似た商品を販売すれば全て不正競争防止法違反になるとするのと同義であり、意匠法によってのみ限定的に商品デザインの独占を認めているわが国の法制度と相容れない。

(二) 混同のおそれ

(1)  原告製品も被告製品も、取引が行われる際、その過程で必ず介在するフェンス販売施工業者等の専門家からカタログ等を示され、商品説明段階、見積段階、契約交渉、契約締結段階、工事施工段階のいずれにおいても、社名、商品名(商標)が確認されるから、誤認混同の可能性はないのであり、これは公共事業用及民間個人用のいずれの施主の場合も同様である。

原告は、施主が既に設置された原告製品を見て気に入って購入するつもりが被告製品を購入してしまうおそれがあると主張するが、そもそも不正競争防止法は出所に基づく誤認混同を防止するものであり、気に入ったものとの混同を保護の対象とするものではない。

被告製品は官公庁やマンション向けの需要が多く、一般個人向け住宅用は少ないうえ、原告は平成九年ころから民需用として別のフェンスを販売し始めており、被告製品はグレードが高く個人住宅用にはほとんど使用されていないのであるから、個人住宅用分野では混同の可能性はない。

(2)  原告製品及び被告製品は、胴縁一体型メッシュフェンスという大枠で形態が共通しており、価格、施工容易性などの要素を売り物にするのは当然であり、被告も多くの技術的優位性を強調して販売しているのであって、原告製品との出所の混同をねらって被告製品を販売しているのではなく、需要者の多様な要望に応じただけである。

原告製品はこれまでその意匠が保護されていたが、期間満了によって消滅したものであるから、原告は、本件訴えによって一旦消滅した意匠権を復活維持しようとするものであって、このような製品に対して不正競争防止法に基づく保護を与える余地はなく、原告の右行為は独占禁止法三条前段の私的独占、同法二条九項六号、又は一九条の公正な取引方法の禁止規定に違反するおそれがある。

3  争点3(損害額)について

(原告の主張)

被告は、被告製品を少なくとも七〇〇〇メートル製造販売し、三八五〇万円を売り上げ、三八五万円の利益を得ており、これによる原告の損害(害された原告の営業上の利益)も三八五万円となる。

(被告の主張)

被告が、被告製品を少なくとも七〇〇〇メートル製造販売し、三八五〇万円を売り上げ、三八五万円の利益を得たことは認め、その余は争う。

第三当裁判所の判断

一  争点1(原告製品の形態が商品の出所表示として取引業者又は施主の間に広く認識されているか否か。)について

1  商品の形態は、本来、商品の実質的機能の発揮、美観や生産効率の向上等を考慮して適宜選択されるものであり、商標のように商品の出所を直接的に表示することを目的とするものではないが、その商品の形態が同種の商品の中にあって独自の特徴を備え、あるいは一定の商品形態が長期間独占的に販売されたり、又は短期間でも強力な宣伝等がなされて使用された結果、商品の形態自体が他と識別され、二次的にその商品の出所を表示する機能を備える場合があり、そのような場合には、不正競争防止法二条一項一号にいう「他人の商品等表示」に該当するというべきである。

以上を前提に、原告製品の形態が商品の出所表示として取引業者又は施主の間に広く認識されているか否かを検討する。

2  前記第二の二及び証拠(文章の末尾に指摘)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 原告製品の主要な構成は別紙物件目録一a、b、c、d、e記載のとおりである。

(二)(1)  原告製品の製造販売状況

ア 原告は昭和五五年から原告製品の製造販売を全国的に開始したが、原告製品はシンプルでその開放的なデザインや風の抵抗を軽減した胴縁等による堅牢性等から国内では従前見られなかったタイプとしてフェンス業界に大きな衝撃を与えた。すなわち、原告製品は、胴縁付きの従来のメッシュフェンスやネットフェンスとは異なり、メッシュパネルの縦線を延長して胴縁とすることで胴縁とメッシュパネルを一体化した胴縁一体型メッシュフェンスであり、開放的なデザインとなっているうえ、それまでのフェンスの主力商品であった胴縁付きの菱形ネットフェンスの場合、人が踏みつけたりするとネットが膨らむなどしていたが、原告製品は右のとおり胴縁とメッシュパネルと一体にしたことで強度が増し、右のような弛みを生じないものとなった(証人八十川紀夫、同松下博行、甲五、七、二〇六、乙五二)。

原告製品の登場により、メッシュフェンス市場は急速に拡大し、昭和六〇年代に入ると、各メーカーが右胴縁一体型メッシュフェンス市場に次々と参入していき、胴縁一体型メッシュフェンス市場は昭和六二年末には年間総需要が一五ないし一八億円となり、メッシュフェンス全体の市場は平成四年ころには年間総需要が一〇〇億円以上もの巨大なものとなった(甲七、乙五二)。

イ 主力商品である原告製品を含む原告のメッシュフェンスは、昭和六二年の時点で三二から三三パーセントの占有率で市場のトップシェアを誇り、平成三年度で六一億円を売り上げ、平成五年度ないし七年度にはいずれも約七〇億円を売り上げて市場占有率三四ないし三八パーセントのトップシェアを維持し、メッシュフェンス市場全体の総需要が約二〇〇億円となった平成九年においても、二〇パーセント台のシェアを維持し、依然としてトップシェアを有している。

原告製品を含むメッシュフェンスを加えた原告のフェンス全体の市場占有率は、地域的にみると、平成三年三月期において、四国で九五パーセント、西日本で七五パーセント、中部関東以北で二五パーセントであり、そのうち、メッシュフェンスの売上高は六〇億円となっている(以上、甲四、五、八)。

ウ 原告製品を含む「朝日UN(ユニ)フェンス」の出荷件数をみると、以下のとおりとなる。

昭和六〇年 一万二〇四四件

昭和六一年 一万六二四〇件

昭和六二年 二万二六七八件

昭和六三年 二万九三五八件

平成元年 三万五一四八件

平成二年 四万一〇四四件

平成三年 四万二七七二件

平成四年 四万七七五一件

平成五年 五万〇九六四件

平成六年 五万六四三五件

平成七年 六万一六六五件

平成八年 六万六一〇〇件

平成九年 六万五六六一件

平成一〇年 六万六〇五〇件

右出荷件数に対する民間(個人を含む)の割合は、それ以外の地方公共団体及び中央官庁等を含めた全体の中で約五〇パーセント(昭和六〇年)であり、その後、徐々に増加し、平成一〇年度には約六八パーセントとなった(以上、甲二〇六)。

(2)  原告製品の宣伝広告及び記事掲載

ア(a) 原告は、昭和五六年一二月号、昭和六一年ないし平成八年のそれぞれ五月号、平成七年一月号、平成九年二月号ないし八月号、同年一〇月号ないし平成一〇年六月号、同年八月号ないし一一月号の雑誌「建設物価」(甲一〇、一一、一八ないし三〇、六八ないし八五)、平成九年一月号ないし平成一〇年一一月号、平成七年秋号、平成八年後期号の雑誌「積算資料」(甲一二、一三、一六、四四ないし六五)、昭和六二年版、昭和六三年版、平成三年版、平成七年版の「積算資料沖縄版」(甲一四、一五、六六、六七。なお、甲一七は原告製品の形態の構成とは異なり、原告製品の宣伝広告とは認められない。)、昭和六一年一〇月号、平成五年四月号、平成六年一月号、平成七年一〇月号、平成八年二月号の雑誌「近代建築」(甲九、一八九ないし一九三)、昭和六一年一二月号ないし昭和六二年三月号、同年一二月号ないし昭和六三年七月号、同年九月号、昭和六三年一一月号、平成元年ないし三年、平成五年、平成六年のそれぞれ一月号、三月号、五月号、七月号、九月号、一一月号、平成四年一月号、三月号、五月号、七月号、八月号、一一月号、平成七年一月号、三月号、五月号、平成一〇年五月号ないし一〇月号の雑誌「月刊住宅着工統計」(甲八九ないし一四七)、及び平成八年広島県建築士会呉地区支部の支部報(甲二〇五)に、原告製品の広告(「朝日UN(ユニ)フェンス」又は「朝日フェンス、UN(ユニ)フェンス」の記載がある。)を原告製品の写真入りで掲載した。

雑誌(甲一四、一一一ないし一四七)の宣伝広告には、原告製品の構成に加えて別の構成をも有する製品の写真が「朝日UN(ユニ)フェンス」又は「朝日フェンス、UN(ユニ)フェンス」の名前と共に掲載されているが、これらの製品も、原告製品の大きな特徴は有するものであるから、原告製品の広告であると認めることができる。

(b) ただし、右(a)のうち、雑誌の宣伝広告には原告製品の写真がなく(甲一九、六九、七一、七三、七六、七九、八五)、雑誌(甲九、一八九)の宣伝広告には、原告製品の構成と異なる製品の写真が「朝日UN(ユニ)フェンス」又は「朝日フェンス、UN(ユニ)フェンス」の名前と共に掲載されている。また、右(a)の雑誌の中には原告製品がシンプルであることを示す文言の記載があるものもあるが(甲六八、七〇、七二、七四、七五、七七、八〇ないし八四、八六、八七、九二ないし一四一)、それ以外にはそのような原告製品の形態自体の特徴を示す文言はない。さらに、「朝日UN(ユニ)フェンス」の商品名を掲載していないものや(甲一九〇ないし一九三)、掲載されている原告製品の写真が小さくて胴縁の形状等が詳細にはわからないものがある(甲一八、四四、九三、一〇八ないし一一〇。少なくとも東洋エクステリアの「ハイグリッドA」との区別はつかないと解される。)。

右宣伝広告の中には、胴縁やメッシュパネルの形状など、他の胴縁一体型メッシュフェンスとの相違点又は他の胴縁一体型メッシュフェンスに対する原告製品の特徴を示す文章の記載は全くない。

イ また、原告は、建設省関係の新聞、「日刊産業新聞」、「建通新聞」「日刊鉄鋼新聞」といった業界新聞にも宣伝広告を行い、フェンス販売施工業者等にカタログを配布した。カタログには原告製品の写真が掲載されており、網だれせず耐久性があり、形状がシンプルであることを強調した宣伝内容となっている(証人八十川紀夫、甲一)。

ウ 原告製品が胴縁一体型メッシュフェンスの先駆者としてフェンス業界に衝撃を与えた旨の記事が、昭和六二年一〇月一六日号の「外装新聞」に掲載され、その後、原告製品は、平成五年ないし平成七年の各四月一日付け及び平成一〇年五月一日付け発行の雑誌「建材情報」に記事として掲載されたが、その中には「メッシュフェンスの良さは、パイオニアブランドである朝日スチールのユニフェンスに窺える胴縁のないシンプルなデザインにある。」、「ユ二フェンスは、ハイテンション線による胴縁が、シンプルなデザインと、高い施工性を生み出した。」との記載がある(甲七、一九九ないし二〇二)。

その他、原告製品は、平成四-六年版、平成六-八年版、平成七、八年版の建築資材の販売会社等のカタログに掲載された(甲一九四ないし一九八)。

(3)  原告製品の設置状況

原告製品は大量に販売された結果、四国四県、東京都、神奈川県、兵庫県、広島県、大分県、鹿児島県等に設置されている(証人八十川紀夫、甲八、一六七ないし一七二、一七三の下の写真、一七四の上の写真、一七五の下の写真、一七六ないし一八八。なお、甲一七三の上の写真、一七四の下の写真、一七五の上の写真記載の「朝日UN(ユニ)フェンス」は原告製品の構成と異なり、原告製品とはいえない。)。

(4)  原告製品の取引状況

胴縁一体型メッシュフェンスは建築資材であり、施主が個人の消費者(一般ユーザー)の場合、施主が建設業者等に一任して右業者が決定することが多い。施主自身が決定する場合でも、工事を請け負った元請業者、工事販売店など原告との間に介在する業者の意向を強く受けることが多く、施主は右業者から提示されたカタログを見たうえで、検討して決定することになるが、右カタログを提示する段階、見積りの段階及び発注の段階と、少なくとも三回はその商品名及び製品名が提示され、施主がその確認を行うことになる(証人松下博行、同八十川紀夫、甲二〇七、乙四三の1、2、五二、五八)。

また、施主が官公庁の場合、入札制度により設計書あるいは施工図面で使用される製品が指定され、原告製品と同等品といった指定の仕方が多いが、取引業者は使用材料承認願いを出し、官公庁から承認をもらう必要があり、材料納入時には、施主の意向を受けた設計事務所等の監督官による材料検査が行われるのであり、取引業者が他の製品に変更する場合、官公庁は最終的にどの製品かを確認する(証人松下博行、同馬場浩志、乙五八、五九)。

原告製品は梱包された状態で販売されるが、部品、メッシュパネル、支柱がそれぞれ個別に梱包され、その上には「朝日スチール工業株式会社」との記載がある(乙一七、三八)。

(三)(1)  原告製品以外の胴縁一体型メッシュフェンスの製造販売状況及びその形態

原告製品の発売後、被告及び住宅分野のトップメーカーである東洋エクステリアが胴縁一体型メッシュフェンスの製造販売に乗りだし、胴縁一体型メッシュフェンスの普及に弾みをつけた。特に昭和六一年頃から他の会社による新規参入が顕著となり、昭和六二年一一月の時点で、ブランド商品として胴縁一体型メッシュフェンスを製造販売する会社は広域展開を行っているものだけで一〇社となった。

いずれの胴縁一体型メッシュフェンスも、多数の縦線と横線から成る長方形の格子状の形状を含むメッシュパネルと縦線の延長にある上下の胴縁による構成を含んだものとなっている。そのうち、上下端を除き、原告製品と同様にメッシュパネル全体が縦長四角形の格子で構成されている製品が被告の「メッシュフェンスG10」、トーアスチール株式会社(以下「トーアスチール」という。)の「ネオフェンス」、新日軽株式会社(以下「新日軽」という。)の「マイアミフェンス」、川建フェンス株式会社販売(川鉄建材工業株式会社製造)の「ウェルメッシュI型」、瀬戸内金網商工株式会社の「リュウセンフェンス」、松下電工株式会社(以下「松下電工」という。)の「メッシュライン1型」と六つある。また、一〇社の製品のうち、東洋エクステリアの「グリッドフェンスR型」、沼田金属工業の「カールメッシュフェンス」は、メッシュフェンスの上下端の胴縁が円筒状となっており、原告製品の胴縁とほぼ同様の形態である(以上、甲七、三四ないし三八、四〇ないし四三、弁論の全趣旨)。

被告のメッシュフェンスの昭和六二年における市場占有率は二〇パーセント前後であり、原告に次いで第二位のシェアを占めている。平成五年度から七年度にかけて、トーアスチールは三二億円から三五億円と、メッシュフェンスの販売量を増大させ、被告も二二億円から三四億円と順調に出荷量を増加させ、原告に続き、それぞれ、メッシュフェンス市場で第二位及び第三位の位置を占めた。原告製品を含む原告のメッシュフェンスはその後市場占有率を落としたものの、平成九年の時点においてもトップシェアであり、被告及びトーアスチールがこれに続き、その次のシェアを有する東洋エクステリアを含めた四社が市場の大半のシェアを占めている(甲四、五、七、二〇〇、二〇二)。

各メーカーは、その後、上下の胴縁が円筒状である胴縁一体型メッシュフェンスを次々に製造販売するようになり、遅くとも被告製品の製造が開始された時点において、別紙三記載のとおり、胴縁が円筒状である胴縁一体型メッシュフェンスを製造販売する会社が原告及び被告を含めて八社となり、右メッシュフェンスは神奈川県、滋賀県、大阪府、広島県、愛知県など各地に設置された。

別紙三記載の胴縁一体型メッシュフェンスのうち、東洋エクステリアの「ハイグリッドA」は、胴縁が円筒状であり(ただし、胴縁はメッシュパネルを延長したものではなく、胴縁の上端まで延びたメッシュパネルを囲んで溶接されており、胴縁の円筒内の横線の数も他の製品が六本なのに対し五本である。)、かつ、原告製品と同様に縦長四角形の形状の格子で構成されたメッシュパネル部を有している。トーアスチールの「Neo(ネオ)ロータフェンス」は、胴縁が円筒状であり、縦長四角形の形状の格子で構成されたメッシュパネル部(ただし、中央部分には別紙三記載のとおり、横長四角形で構成された部分がある。)を有している(以上まで、証人馬場浩志、甲四〇、乙二、三、五ないし七、一九、四四)。

また、沼田金属工業の「ニューカールフェンス」は、遅くとも平成七年から宣伝広告されているが、その胴縁が円筒状であり、かつ、縦長四角形の形状の格子で構成されたメッシュパネル部を有しており、右二点の構成については原告製品と同様の形態である。なお、原告は、平成九年七月二三日付けで、沼田金属工業に対し、原告の意匠権の侵害と不正競争防止法二条一項一号違反を理由として、右「ニューカールフェンス」の製造中止を求め、同年一一月、原告は、沼田金属との間で、原告が製造販売する「朝日UN(ユニ)フェンス」が原告の意匠権に基づく商品であり、需要者において周知著名な形態の商品である旨の合意をしている。ただし、その後も「ニューカールフェンス」が東北地区の市場に出荷されている状況が認められる(甲三一ないし三三、乙四、三九)。

(2)  被告製品等の宣伝広告状況

被告は、平成一〇年五月号の雑誌CCI(乙一〇の1、2)、平成一〇年五月二〇日付け雑誌「建材需要調査」(乙一二の2)、平成一〇年五月二二日付け新聞「週刊建材新聞」(乙一一)、平成一〇年七月号及び平成一一年度版の雑誌「建設物価」(乙二一、二二)に、被告製品を写真入りで宣伝広告している。平成一〇年五月二〇日付け雑誌「建材需要調査」(乙一二の3)には、「業者各社が次々に丸形のメッシュフェンスを品揃え、販売している中、市場の要望に応え」て被告製品が発売された旨記載されている。また、被告は、平成九年二月号及び平成一〇年二月号の雑誌「積算資料」の各表紙にそれぞれ「メッシュフェンスG20」及び「メッシュフェンスG10」を、写真入りで宣伝広告している(甲四五、五七)。

トーアスチールは、平成二年一二月号、平成三年四月号、一一月号、一二月号、平成四年四月号、五月号、八月号、一〇月号、平成五年二月号、四月号ないし六月号、一一月号、一二月号及び平成六年二月号の雑誌「積算資料」に、平成三年一月から製造販売を開始した「Neo(ネオ)ロータフェンス」の写真を掲載した宣伝広告を行っている(乙二三ないし三七)。

松下電工及び沼田金属工業は、昭和六二年一〇月一六日付け「外装新聞」に、それぞれ「メッシュライン1型」の「カールメッシュフェンス」の各写真を掲載した宣伝広告を行っている(甲七)。

日建フェンス工業株式会社は、平成九年七月二二日付け「外装新聞」、平成一〇年五月一日付け「建材情報」に、「ステラフェンス」の写真を掲載した宣伝広告を行っている(甲五、二〇二)。

(3)  他社の胴縁一体型メッシュフェンス製造販売に対する原告の態度

ア 原告は、原告製品の発売後、胴縁一体型メッシュフェンス市場への他社の参入を認める態度を採った。

イ 原告は、昭和六〇年ころ、沼田金属工業の「カールメッシュフェンス」が原告製品で実現されている原告の意匠権を侵害するとして特許庁に審判を求めたが、右主張は退けられ、沼田金属工業の「カールメッシュフェンス」は沼田金属工業が昭和六〇年一二月に意匠登録をしている。

その他のメーカーも、次のとおり、胴縁一体型メッシュフェンスの意匠登録を行い、意匠権を取得している。

(a) トーアスチールの「ネオロータフェンス」に極めて類似している意匠について、瀬戸内金網株式会社が意匠権を取得しており、同社はトーアスチールに対して意匠権の実施を許諾している。

(b) 日鐵建材工業株式曾社の「ステラフェンス」に類似する意匠は、タキロン株式会社(以下「タキロン」という。)がその意匠権を取得している。

(c) 新日軽の「マイアミ3型」の意匠は、タキロンが意匠権を取得している。

(d) 川建フェンスの「KR(カール)」に類似した意匠は、タキロンが意匠権を取得している。((a)ないし(d)までは当事者間に争いがない。)

ウ 原告は、他社製品がそれぞれ登録意匠に基づき胴縁一体型メッシュフェンスを製造販売していたので、原告製品の発売以降平成九年に入るまで、不正競争防止法に基づく差止請求や抗議を行うことはなかった。(以上、(3) につき、証人八十川紀夫、甲一五四、乙二〇)

3(一)  以上の事実を前提に原告製品の形態が商品の出所表示性を有するかについて検討する。

(1)  以上の事実のうち、特に以下の事実は重要である。すなわち、原告製品の形態は、別紙物件目録一記載のとおりで、胴縁のないシンプルで開放的なデザインであり、そのデザインにつき、原告は意匠権を取得し、同意匠権は昭和五九年一一月から平成九年一一月まで存続した。原告製品は、右意匠権を実施した結果得られた形態であって、昭和五五年、国内では従前見られなかった胴縁一体型のメッシュフェンスとしてフェンス業界に大きな衝撃を与え、その後巨大な市場に成長した胴縁一体型メッシュフェンスの草分け的存在である。右一2(三)及び別紙三記載のとおり、同製品発売後、同業他社が、昭和六一年頃から、右一2(三)(1) のとおりの類似の形態の胴縁一体型のメッシュフェンスを多種類に多数発売し、長期間継続して販売してきたので、原告製品の形態を原告の製品であるとする出所表示性は時の経過とともに希釈化されてきた。しかし、原告製品は、同業各社の製品と区別され、胴縁一体型のメッシュフェンスとして同一のものはなく、同業各社の製品形態は同業各社が有する意匠権に基づきそれぞれの相違点をもって長年販売され、原告製品と各社の製品が棲み分けられてきた。そして、右一2(二)のとおり、原告は、これまで一貫してメッシュフェンスのトップシェアを維持し、その主力商品として原告製品を販売してきたし、業界向けの雑誌等に同製品の宣伝広告を一定程度行ってきた。

(2)  右によれば、原告製品の形態は、同業他社製品の販売宣伝等によって相当程度希釈化されているものの、被告製品の販売開始時(遅くとも平成一〇年一月一日)から現在までの間、なお他の同種製品と識別され、原告の出所を表示する機能を有していると認めるのが相当である。

(二)  原告製品の出所表示の周知性について

(1)  被告は、周知性の対象を取引業者や官公庁に限るべきであると主張するが、個人のフェンス購入希望者も、原告が主張するように、現実に設置されたフェンスを見て購入を決める場合もないではないから、周知性の従たる対象に含めるのが相当である。

(2)  右一2の認定事実並びに証拠(証人松下博行、同山田忠勝、同八十川紀夫、甲二〇七、乙五八)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。

原告は、右一2(二)(2) のとおり、原告製品の宣伝広告を主に業界向けの雑誌で行ってきた。しかし、胴縁一体型のメッシュフェンスは、建築資材であって、現在多くの種類が市場に出荷されているため、施主(官庁及び個人を含む。)は、その出所を区別することができない。設計事務所、元請及び下請業者については、フェンスが建築業界において、建物の建築及び土木工事のいずれについても、やや周辺的な分野に属することもあり、また、フェンスの指定が「ユニフェンス同等品」あるいは「積水樹脂同等品」などと表記し特定会社の製品を指定し難い状況にあって、右業者が数多くのメッシュフェンス製品の出所を指摘することができない。

他方、フェンス販売施工業者は、他の取引業者からフェンス専門業者とも呼ばれ、日常的にメッシュフェンスを販売施工しているので、その出所の区別は可能であり、被告製品の販売開始時(遅くとも平成一〇年一月一日)から現在までの間、原告製品の出所を認識している。

(3)  原告は、例えば、公園等に設置されているメッシュフェンスを見て発注する施主は、原告の製品であることまでは知らなくても、特定の会社が製造販売する製品であると認識していれば周知性に欠けることはない旨主張する。

しかし、どのような製品でも特定の会社が製造したものであることは明らかであるから、製品の形態から製造元である出所、すなわち特定の会社あるいは商品名が直接あるいは間接的に認識できなければならないというべきである。施主が、現に設置された原告製品を見て、原告の名前を覚えていなくても、原告以外のカタログを見せられて、その違いが分からず他社製品を発注する(ことを原告は危惧しているが)、その程度の認識では、原告製品の出所表示を認識していた、あるいはその周知性があったということはできない。

(4)  右によれば、原告製品の出所表示としての周知性は、フェンス販売施工業者については認められるが、その余の取引業者及び施主にはこれを認めるに足りない。

二  争点2(被告製品が原告製品と類似し、原告製品の出所について、取引業者又は施主に誤認混同を生じさせ、あるいは生じさせるおそれがあるか否か。)について

証拠(証人松下博行、同山田忠勝、乙一七、三八、五二、五七)によれば、フェンス販売施工業者は、フェンス専門業者であって、原告製品の選択に当たっては、デザインだけでなく、メーカーの信用性、製品の耐久性、価格、施工性及び納期等が重要な要素として考慮されること、被告製品は、原告製品と同様に(前記一2(二)(4) 参照)、部品、メッシュパネル、支柱がそれぞれ個別に梱包されて販売され、梱包上には「積水樹脂株式会社」、「積水樹脂(株)」、「メッシュフェンスG0」との表示があることが認められ、また、前記一2(二)(4) の原告製品の取引状況のとおり、フェンス販売施工業者は、施主が個人の場合、メッシュフェンスを選択する際、カタログを提示する段階、見積りの段階及び発注の段階の少なくとも三回はその商品名及び製品名を提示して取引を行うこと、施主が官公庁の場合、入札の際設計図等によりメッシュフェンスの製品が特定され、納入製品については材料検査も行われていることが認められる。

右事実によれば、フェンス販売施工業者が、原告製品の出所を誤認混同したり、そのおそれがあるとは認められない。

三  よって、原告の請求は、その余を判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 馬渕勉 裁判官 真鍋美穂子 裁判官 佐藤弘規)

別紙<省略>

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